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 プロジェクトの目的

キモチを整える場所や時間

近年、頻発する未曾有の大規模災害。

こうしている今もなお、多くの被災者の方々が大きな不安と悲しみを抱えたまま、慣れない避難所での生活を余儀なくされています。

長期化する避難所生活では、生命の維持や安全確保といった当初の役割から、やがては身体や心の健康維持、そして、生きる活力の醸成と、求められる役割りも時間とともに変化していくことが数々の調査からわかってきています。

私たちは、長期の避難所生活では日常当たり前に出来ていたことが極めて困難になることや、COVID-19以降の人と人とのコミュニケーションを妨げる事態など、多様な衛生に関わる問題に着目しました。

そして、それらをデザイン×テクノロジーで解決することを目的とした「避難所の衛生ストレス解決プロジェクト」をスタートさせます。

同時に、本プロジェクトのために<ひとごこちデザインラボ>を創設。

ラボを基盤にして、現場に寄り添い、共にデザインする活動をすすめていく予定です。

被災者の方々のキモチを整えることができる場所や時間を創造することで、笑顔で再び前に向かって歩き出すためのチカラになりたいと考えています。

 避難所生活の考察

見えてきた過酷な現実

これまでの調査や多方面にわたるインタビュー等から、あらためて災害時における現場の過酷さや避難所生活の不自由さといった実態を知るとともに、多くの問題点や課題点のようなものが見えてきました。

それどころじゃない。
でも、それも大切。

避難所で生活をされた被災者の方々や過酷な現場で被災者を救うべく活動されてきた支援者の方々のお話をお伺いすると、非常時には極めて優先度が低く見える事柄でも、実はそれが「人間らしい意識」を支える重要な事になっていたことが多く見受けられました。 日常の当たり前や習慣が人としての尊厳や気持ちに大きな影響を及ぼし、また衛生的であることは”気持ち良い”や”快適”といった体感に限らず、精神的な部分に大きく関わり、”安心”や”癒し”といった、気持ちのありようや心のケアにもつながりやすいようです。 私たちはこれを「衛生ストレス」と名付け、その解決や軽減のためのデザインソリューションの創造をミッションとしています。

 プレプロジェクト

京都工芸繊維大学大学院「共創デザインアプローチ」での試み

人のキモチに寄り添うデザイン

2021年1月13日。プロジェクトの本スタート前の試みとして、約1ヶ月間にわたり京都工芸繊維大学大学院授業「共創デザインアプローチ」にて<パナソニックのクリーンテクノロジーの避難所生活への適用>を題材とした授業が実施されました。

この授業は、被災者・支援者に対するインタビューなどを通じて、改めて避難所生活問題とクリーンテクノロジーの解釈を行い、避難所での生活の質向上に向けたソリューションを開発することを目的としました。櫛先生の指導のもと、本授業を受講する総勢18名の学生が3チームに分かれ、それぞれユニークな視点でのデザインを創造してくれました。

Prototype design 2021.01.26/From the Kyoto Institute of Technology co-creation design class

最終日のプレゼンテーションでは、本プロジェクトのテクニカルサポート企業であるPanasonicアプライアンス社の事業開発や技術開発の方々にも参加いただき、自由な発想のもとで生まれたソリューションアイディアについてさまざまな感想や要望が取り交わされました。このプレ・プロジェクトの試みは、今後の可能性を明示するとともに、避難所への実装に向けた確かな手応えとなりました。

 ひとごこちデザインラボとは?

ひとごこち:生きた心地。ほっとくつろいだ感じ。人間としての平常の感覚や意識

避難所の衛生に関わる問題をデザイン×テクノロジーで解決する研究機関

<ひとごこちデザインラボ>は、企業の商品企画開発や研究開発を生活者起点と対話的協働でサポートするイノベーション・エージェントのUCI lab.と「京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系」の櫛研究室が協同して創設した組織です。

「避難所の衛生ストレス解決」プロジェクトには、クリーンテクノロジー開発でも最先端をゆくPanasonic アプライアンス社が全面的な技術協力として加わり、具体的な技術を伴うデザインが可能となりました。

プレスリリース:避難所の衛生ストレス問題に対してデザインと技術の力で解決に挑む産学連携プロジェクトを開始

 ひとごこちデザインラボ・メンバー

ラボ統括

渡辺 隆史

UCI Lab.合同会社 代表

UCI(User Centered Innovation)、つまり生活者起点で新しい価値を生み出すことを掲げるラボにとって、そもそも誰をユーザーに想定するのかというのはとても重要な問題です。

2020年以降、私たちの生活はそれぞれ大きく変わりました。しかし、それ以前から日常の当たり前が大きく揺らぐのが自然災害であり、避難所はCOVID-19によってさらなる大きな困難や制約に直面しています。誰もが突然当事者になる可能性がある避難所のQOL(Quality Of Life)向上のために、イノベーションやデザインや技術は、どのような貢献ができるでしょうか。

私自身は防災やボランティア活動の専門家ではありません。だからこそ、これまで避難所生活や運営を経験された方の声から学ぶことを大切にします。誰もが不慣れで制約の多い環境においてきちんと役に立つ、そんなデザインを共創することを目指して、地道に取り組んでいこうと思います。

櫛 勝彦

京都工芸繊維大学 デザイン・建築学系 教授

一般的にデザインはカタチに関わる仕事と理解されていますが、カタチの概念は実に幅広いものです。自然現象も含め、身の回りの様々な状況は、目に見え、耳に聞こえ、肌に感じてはじめて私はその存在を知ることができます。日常生活を快適に過ごすために使われるモノやサービスは、ヒトの隠れたニーズという内部圧力と環境との接点・境界(カタチ)と考えることができるでしょう。しかし、電気が止まった時の電化製品やインターネット時代の本棚の大型百科事典のように、環境が少し変わるだけでそれらは無用となりえます。災害時避難生活という非日常では、多くの快適と便利は失われ、現場ニーズも流動的です。観察可能な一定ニーズへの解答を生み出す「デザイン」は機能しません。

この取り組みでは、被災者や現場支援者の記憶に留まる「ものがたり」を掘り起こすことを中心に、環境変化とヒトの心の動きを理解することで、安心と活力を得るための、災害時避難生活におけるヒトと環境の新たな境界(カタチ)を見つけたいと思っています。


宮本 裕子(防災士)

梅田 憲一
(tsunagu Design/アートディレクター)

田中 陽子
(UCI Lab./デザイン・プランナー)

パナソニック様よりコメント

パナソニック アプライアンス社
ビューティ・パーソナルケア事業部 部長
中村浩二

昨今、人々の暮らしにおいて高まる清潔な空間へのニーズに対して私たちはいち早く注目し、「クリーンテクノロジー」の開発に取り組んできました。その一例である「ナノイー」は1997年に開発に着手し、20年以上にわたり絶えず進化させてきた技術です。現在では、家電や住まい、オフィスにとどまらず、自動車や電車などの移動空間、競技施設などの公共空間に至るまで、人々の暮らしのさまざまな場面に使われ、清潔で快適な空間を創り出しています。


私たちは、当社が保有する空気と水の「クリーンテクノロジー」の提供を通じて、学生ならではのユニークな視点に立ったアイディアの具現化を全力でサポートしていきます。そして、非日常である避難所という生活環境の質向上に「クリーンテクノロジー」で貢献できることを、期待しています。

 プロジェクトの未来